大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち

2017/3/18(土)〜6/18(日)休館日5/15(月)

森アーツセンターギャラリー 六本木ヒルズ森タワー52階 〒106-6150 東京都港区六本木5-10-1

コラム「エルミタージュ浪漫」

〈第10回〉人々を魅了した、スペインの名匠の「発明」

 裁縫仕事の手を休め、ふと宙を見つめる少女。
 神の気配でも感じたのだろうか。のちにキリストの母となるマリアの幼い頃という。いたいけな表情に、心を動かされない人はいないだろう。

 なにしろ「聖母」で、「少女時代」。
 清純と無垢を掛け合わせたようなもので、どんなに世俗のアカに汚れきった心だって、浄められてしまう。

《聖母マリアの少女時代》エルミタージュ美術館に展示される、
フランシスコ・デ・スルバラン《聖母マリアの少女時代》1660年頃
Photo by Valentin Baranovsky

 描いたのは、宗教画を数多く残した17世紀スペインの名匠、フランシスコ・デ・スルバラン。
「聖母の少女時代」という主題は、彼の発明だった。

 そもそも西洋絵画の歴史において、子どもを主題とする絵画が、そんなに古くからあったわけではない。
 15〜16世紀のルネサンス期にまず良家の子女の肖像画がつくられた。17世紀に風俗画の一部として、ようやく庶民の子どもたちが描かれるようになった。
 スルバランの発想は、当時としては、斬新だったのである。

スペイン絵画の展示室エルミタージュ美術館のスペイン絵画の展示室。インテリアも豪華。
Photo by Valentin Baranovsky

 エルミタージュ美術館のスペイン絵画担当キュレーター、リュドミラ・カガネさんは、本作の魅力を次のように解説する。

「光と影の劇的な対比、豊かな色彩表現、細やかな描写力。どれをとっても、スルバランの高い技量を示しています。彼の作品としては小さなものですが、大作に引けをとりません。スペイン絵画史上、屈指の名画です。」

リュドミラ・カガネさんエルミタージュ美術館 スペイン絵画担当キュレーター、リュドミラ・カガネさん
Photo by Valentin Baranovsky

 描かれた少女は、画家自身の娘をモデルにしたとも言われている。
 絵全体の雰囲気が親しみやすく感じられるのも、愛情のこもった視線で少女を見つめているからかもしれない。

■菅谷淳夫 プロフィール
美術ライター。アート関連のほかにも、旅、鉄道、評伝など幅広い分野の記事を執筆。
『小学館版 学習まんが人物館 レオナルド・ダ・ヴィンチ』のシナリオを担当。

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