大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち

2017/3/18(土)〜6/18(日)休館日5/15(月)

森アーツセンターギャラリー 六本木ヒルズ森タワー52階 〒106-6150 東京都港区六本木5-10-1

コラム「エルミタージュ浪漫」

〈第12回〉4月2日を「エルミタージュの日」にしよう

 エイプリルフールの翌日、4月2日は、エルミタージュ美術館と日本の関係を語るうえで、とても重要な日だ。

 今から150年ほど前の明治6年(1873)のこの日、エルミタージュを訪れた日本人の団体がいた。
 明治政府の重鎮・岩倉具視(ともみ)を全権大使として、欧米10カ国以上を約1年10ヶ月かけて回った、岩倉使節団の一行である。

エルミタージュ美術館前の広場エルミタージュ美術館前の広場。使節団は、ここで消防訓練を見学した。
Photo by Valentin Baranovsky

 彼らの目的は、外交と西洋文明の視察。
 ロシアでの一番の仕事は、皇帝アレクサンドル2世に謁見することだが、その前後にサンクトペテルブルク観光を楽しんでいる。

エルミタージュ美術館・冬宮、正面入口のヨルダン階段。エルミタージュ美術館・冬宮、正面入口のヨルダン階段。
皇帝に謁見する使節団は、ここから宮殿内に入った。
Photo by Valentin Baranovsky

 エルミタージュ美術館へは、到着して2日後に、早くも訪れた。
 当時、冬宮には皇帝が実際にいたわけだから、今日で言う、小・旧・新、3つのエルミタージュを回ったのだろう。
 旅の詳細な記録である『米欧回覧実記』(岩波文庫)では、「帝宮内ニ設ケタル宝庫」という表現をしている。

新エルミタージュ、イタリア美術の部屋。新エルミタージュ、イタリア美術の部屋。
大画面の絵を展示できるように設計された。
Photo by Valentin Baranovsky

 長い回廊を、美術工芸品、彫像、絵画が埋め尽くす光景に、使節団は圧倒された。
 絵画について『実記』は、「多ク蔵ス」と記すのみで、個々の作品についての説明はほとんどない。
 唯一、具体的に触れているのは、「聖ペテロの磔刑(たっけい)」を描いた絵があるということ。これは、今も同館が所蔵するイタリアの巨匠カラヴァッジョの作品と思われる。

 興味深いことに、館内で絵を模写している画工が何人かいた、と記録されている。
 画家の卵が修行していたのだろうか。

現在も休館日などには、絵画を模写する人を見かける。現在も休館日などには、絵画を模写する人を見かける。
Photo by Valentin Baranovsky

 エルミタージュ美術館が、一般にも門戸を開いたのが1852年。
 岩倉使節団が訪れたころには、公共の施設として認知されていたことがうかがえる。

 というわけで、4月2日は、美術館について考えるのに絶好の日だ。
 心ひそかに「エルミタージュの日」と呼びたい。

■菅谷淳夫 プロフィール
美術ライター。アート関連のほかにも、旅、鉄道、評伝など幅広い分野の記事を執筆。
『小学館版 学習まんが人物館 レオナルド・ダ・ヴィンチ』のシナリオを担当。

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