大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち

2017/3/18(土)〜6/18(日)休館日5/15(月)

森アーツセンターギャラリー 六本木ヒルズ森タワー52階 〒106-6150 東京都港区六本木5-10-1

コラム「エルミタージュ浪漫」

〈第3回〉最新の調査でわかった、美術館の意外な始まり

 エルミタージュ美術館の歴史は、1764年に始まるとされる。

 サンクトペテルブルクの創建から、およそ60年後のことだ。
 この年、ロシアを強国に導いた女帝エカテリーナ2世は、プロイセン(現在のドイツ北部のあたり)の商人より、まとまった数の名画を手に入れる。これが膨大なコレクションを築く第一歩となった。

エルミタージュ美術館のオランダ絵画展示室エルミタージュ美術館のオランダ絵画展示室

 これまで、エカテリーナ2世はロシアの国力を示すために絵画を手に入れた、と言われてきた。
 しかし、同館西洋絵画部のセルゲイ・アンドロソフ部長は、これを否定する。

エルミタージュ美術館西洋絵画部 部長セルゲイ・アンドロソフ氏エルミタージュ美術館西洋絵画部
部長セルゲイ・アンドロソフ氏

「近年の調査によって、通説に多くの誤りがあることがわかりました」と。

 事実はこうだった。
 プロイセンの商人(ゴツコフスキーという名前だ)は、戦争などの影響により、ロシア皇帝に対して多額の負債を抱えることになった。破産を免れるため、彼は手元にあった絵画コレクションを支払いの一部に充てたいと申しでた。
 エカテリーナ2世は熟考のすえ、この提案を受け入れた。

「味気ない話ですが、最初のコレクションは借金のカタとしてロシアに来たのです」とアンドロソフ部長。

 かつて、その数は225点と言われていたが、これも違っていた。実際には、317点の絵画が海を渡ってきたことが判明した。

 内訳を見ると、オランダ、イタリア、フランドルの絵画が多かった。
 当然のことだが、みな18世紀前半までに描かれた作品ばかり。まさに今回の展覧会で扱う「オールドマスター」がそろっていた。

 来日する作品から一例を挙げれば、オランダの肖像画の名手、フランス・ハルスの《手袋を持つ男の肖像》は、この記念的なコレクションの1枚だ。
 他に劇的な人物表現を得意としたヘラルト・ファン・ホントホルストの2点の風俗画などがある。

エルミタージュ美術館に展示される、フランス・ハルスの《手袋を持つ男の肖像》(1640年頃)エルミタージュ美術館に展示される、
フランス・ハルスの《手袋を持つ男の肖像》(1640年頃)

 生きた歴史に出会えること。それもまたエルミタージュの絵画を前にした時の楽しみのひとつだ。

ヘラルト・ファン・ホントホルスト《陽気なヴァイオリン弾き》(1624年)ヘラルト・ファン・ホントホルスト
《陽気なヴァイオリン弾き》(1624年)
ヘラルト・ファン・ホントホルスト《陽気なリュート弾き》(1624年)ヘラルト・ファン・ホントホルスト
《陽気なリュート弾き》(1624年)

All Photo by Valentin Baranovsky

■菅谷淳夫 プロフィール
美術ライター。アート関連のほかにも、旅、鉄道、評伝など幅広い分野の記事を執筆。
『小学館版 学習まんが人物館 レオナルド・ダ・ヴィンチ』のシナリオを担当。

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