大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち

2017/3/18(土)〜6/18(日)休館日5/15(月)

森アーツセンターギャラリー 六本木ヒルズ森タワー52階 〒106-6150 東京都港区六本木5-10-1

コラム「エルミタージュ浪漫」

〈第5回〉黄金のニワトリは幸運のしるしか

 2017年の干支は酉。
 エルミタージュ美術館にも、とても有名な黄金のニワトリ像がある。もっとも、その展示物の主役はクジャクだけれども。
「孔雀座」あるいは「黄金の孔雀」と呼ばれる、大きなからくり時計のことだ。

 まばゆい輝きを放つ時計は、中央に堂々たるクジャクが王のように君臨し、両脇に従者のごとくニワトリとフクロウが並ぶ。
 左右の2羽は、朝と夜の象徴ということなのだろう。

「孔雀座」の時計。右にいるのがニワトリ、左のかごの中がフクロウ。「孔雀座」の時計。右にいるのがニワトリ、左のかごの中がフクロウ。
Photo by Valentin Baranovsky

 時計が置かれているのは、「小エルミタージュ」と呼ばれている、エルミタージュ美術館で最も古い一画だ。
 女帝エカテリーナ2世は、急に増えた絵画コレクションを展示しようと、1764年よりおよそ10年余りをかけて、やや細長い建物を宮殿の隣に造った。
 建物の1階には、女帝が客人を招いて夜会を開く私的な空間があった。当時の慣習にしたがって、その空間は「隠れ家(エルミタージュ)」と呼ばれた。
 今にいたる、美術館の名の由来だ。

小エルミタージュの屋根には、空中庭園も造られた。庭園の下に、女帝が夜会を開く「隠れ家」があった。小エルミタージュの屋根には、空中庭園も造られた。
庭園の下に、女帝が夜会を開く「隠れ家」があった。
Photo by Valentin Baranovsky

 夜会に招かれた人物には、女帝の寵臣ポチョムキン(1739〜91)もいたことだろう。
 事実上のパートナーであった彼こそ、からくり時計の注文主だった。
 ポチョムキンは、女帝を喜ばすために、わざわざロンドンの時計職人にこれを造らせ、ロシアに取り寄せた。
 はじめは彼の邸宅であったタヴリーダ宮殿に置かれていた。彼が亡くなったあと、女帝がその思い出とともに買い入れた。
 現在の場所に置かれたのは、ずっと後のことになる。

エカテリーナ2世像の足下には寵臣たちが並ぶ。真ん中がポチョムキン。サンクトペテルブルク市内エカテリーナ2世像の足下には寵臣たちが並ぶ。真ん中がポチョムキン。サンクトペテルブルク市内

 時計は、ぜんまい仕掛けで動く。
 しかるべき時間になると、最初にフクロウが目を開けたり閉じたりしながら回りだす。次にクジャクがゆっくりと羽を広げ、最後にニワトリがけたたましい鳴き声をあげる。
 鳴き声は、フイゴを利用した仕組みによって音が出る。

時計が置かれるホールは、モザイクの床なども見どころ。これらの装飾は、19世紀に加えられた。時計が置かれるホールは、モザイクの床なども見どころ。
これらの装飾は、19世紀に加えられた。
Photo by Valentin Baranovsky

 現在、時計のからくりを動かすのは、月に1、2度とのこと。
 エルミタージュでニワトリの鳴き声を聞けた人は、よほどの幸運に恵まれているにちがいない。

■菅谷淳夫 プロフィール
美術ライター。アート関連のほかにも、旅、鉄道、評伝など幅広い分野の記事を執筆。
『小学館版 学習まんが人物館 レオナルド・ダ・ヴィンチ』のシナリオを担当。

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