大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち

2017/3/18(土)〜6/18(日)休館日5/15(月)

森アーツセンターギャラリー 六本木ヒルズ森タワー52階 〒106-6150 東京都港区六本木5-10-1

コラム「エルミタージュ浪漫」

〈第8回〉信仰が生んだ華やかな聖母子像

 今回からしばらくは、「エルミタージュ美術館のキュレーターが語る出品作の魅力」シリーズをお届けしたいと思う。

 第一弾は、ルネサンス期ドイツの巨匠、ルカス・クラーナハ。
 日本でも、昨年から大規模な展覧会が開催されており、なかなか好評のようだ。

 耽美的で妖艶な女性像で知られるが、展覧会に並ぶ小品などを見ると、けっこう可愛い作品も多い。
 そのあたりは、やはりメルヘンの国の画家なのだろう。

「大エルミタージュ美術館展」で来日するのは、50代で描いた傑作《林檎の木の下の聖母子》。
 出品作のなかでも、最も古い時代に描かれたものだ。

《林檎の木の下の聖母子》ルカス・クラーナハ《林檎の木の下の聖母子》 1530年頃
Photo by Valentin Baranovsky

 この作品、普段は小エルミタージュの回廊に、さりげなく展示されている。
 急ぎ足で館内を見て回る人は気づかないかもしれない。
 ドイツ絵画全般が、そのような扱いなのだが、ちょっと隅に追いやられているようにも見える。
 もちろん公式のカレンダーの表紙にも使われているほどであるから、館を代表する傑作のひとつであるのは間違いない。

展示風景エルミタージュ美術館で展示されるクラーナハ作品。

 同館ドイツ絵画担当キュレーターのマリア・ガルロワさんは、本作について次のように話す。
「とても華やかな絵です。宗教改革の時代に描かれたもので、多くの象徴によって、民衆を啓蒙しようとしています」

マリア・ガルロワさんエルミタージュ美術館 ドイツ絵画担当キュレーターのマリア・ガルロワさん
Photo by Valentin Baranovsky

 本展公式サイトの作品紹介も参考にしながら説明すると、林檎は原罪の象徴であり、パンはキリストの体(聖体)である。全体として、キリストによる救済を表すという。

「構図を見ると、聖母マリアの顔から、キリストの体まで、1本の太い軸のようにつながっています。これは揺るぎない信仰を表したものでしょう」とガルロワさん。

 その美しさは、ますます崇高なものに見えてくる。
 本作がエルミタージュ美術館の所蔵になったのは、ニコライ1世の時代の1846年。コレクションを充実させるために、個人の所蔵家から購入したという。

■菅谷淳夫 プロフィール
美術ライター。アート関連のほかにも、旅、鉄道、評伝など幅広い分野の記事を執筆。
『小学館版 学習まんが人物館 レオナルド・ダ・ヴィンチ』のシナリオを担当。

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