大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち

2017/3/18(土)〜6/18(日)休館日5/15(月)

森アーツセンターギャラリー 六本木ヒルズ森タワー52階 〒106-6150 東京都港区六本木5-10-1

コラム「エルミタージュ浪漫」

〈第9回〉イタリア美女が好んだロシアのあるもの

 ルネサンス期ヴェネツィアを代表する画家、ティツィアーノ。最近は、日本でも、その作品を鑑賞できる機会が増えたようだ。
 イタリア美術を紹介する展覧会には欠かせない画家だし、また世界中でコレクションの対象となってきたので、「○○美術館展」といった企画の主役になることが多いからだろう。

 今回の大エルミタージュ美術館展でも、《羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像》は、最注目作品のひとつ。

《羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像》エルミタージュ美術館に展示される、
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ《羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像》 1538年
Photo by Valentin Baranovsky

 エルミタージュ美術館 ヴェネツィア絵画担当キュレーターのイリーナ・アルテミエワさんによれば、同館のイタリア絵画コレクションのなかでも、やはり「非常に人気が高い作品」だという。

 絵の魅力を、アルテミエワさんは、こう話す。
「若い女性の魅力、生命の輝きを、余すところなく表現しています。柔らかな肌、目の輝き、唇の艶、どこをとってもティツィアーノは、最高の技術を使って、細やかに描きました。
 彼が当時、ヨーロッパで最も人気が高い画家であったことが十分にうなづけます」

イリーナ・アルテミエワさんティツィアーノについて熱弁をふるう、
エルミタージュ美術館 ヴェネツィア絵画担当キュレーターのイリーナ・アルテミエワさん
Photo by Valentin Baranovsky

 生命の輝きを描かせたら右にでるものがいないティツィアーノの良さが、この一作に凝集しているといえよう。

 1772年に、エカテリーナ2世が、フランスの貴族より購入したものである。
 この貴族は、イタリア・ルネサンスの名画を数多く含む、566点ものコレクションを売りに出した。フランス政府も買い上げようとしたが、予算が足りなかったという。
 そこで、かねてよりイタリア絵画のコレクションを充実させたいと思っていたエカテリーナ2世が、まとめて手に入れたのだった。

 女性が身につける衣装も、デザインが凝っている。
 外套には黒い毛皮が使われているが、素材はロシア産のクロテン。一般に「セーブル」とも呼ばれる高級品だ。

 イタリアの美女がロシアの毛皮を羽織るのを見て、エカテリーナ2世は、さぞかし両国の交流に思いをはせたことだろう。

■菅谷淳夫 プロフィール
美術ライター。アート関連のほかにも、旅、鉄道、評伝など幅広い分野の記事を執筆。
『小学館版 学習まんが人物館 レオナルド・ダ・ヴィンチ』のシナリオを担当。

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